君たちはどう生きるか

本日、2023年7月14日に、宮崎駿監督の新作アニメ映画、「君たちはどう生きるか」が劇場公開されました。
さっそく行ってきましたので、その感想を。

※ネタバレしないしストーリーにも一切触れませんが、これから観る予定の人は読むのを後まわしにしたほうがいいです。



ジブリ映画にしては例外的な、中身をほとんど宣伝で伝えないというスラムダンクのような方法だったため、よけいな先入観なしに観ることができました。
キャラどころかジャンルすらも始まるまでわからないという、なかなかない経験ができました。
ただ、作画監督に本田雄さんを迎えていて、なにやら一コマ作画で全編通そうとしている、ということだけは知っていました。

一応説明すると、これまでの宮崎監督の映画作品は二コマ(一秒間に12枚の絵を入れる)作画を基本にしていて、一コマ(一秒間に24枚の絵)作画は特別なシーンに限定されていました。
一コマ作画は滑らかに動くのですが、そのぶん手間がかかるし、気持ちの良い動きをつけるのにセンスが必要だと聞いていたのでどうなるかと思っていたのですが……これは宮崎監督の新境地ですね。
始まって数分で、これはとんでもない作画だと感激しました。

間違いなく宮崎駿の演出でありながら、動きの質感が違う。新しくて密度が高い。
わかる人はわかると思いますが、宮崎アニメに参加しているときの大平晋也さんパートのような動きがずっと続くというか……。(今回も太平さんは原画で参加されてます)

表情のつけかたなども、宮崎さんのデザインでありながら、もう少しリアル寄りというか……これは作監の本田さんの作風が入っているからだと思う。
歴代の宮崎作品のなかでも作画の質は一番だと思うし、歴代の日本アニメのなかでも最高峰だと思う。

最近のアニメは、原画というよりも撮影処理で画面の情報量を上げることが多くなっているのですが、画面の手ぶれとか強すぎるコントラストといったようなものは見られず、これまでの宮崎アニメと同様、画面全体にフォーカスを合わせて無駄なカメラワークを使わないスタイルを継承しています。
おそらく黒澤明からの影響であろう、「画面をごちゃごちゃさせずにハッキリと見せる」スタイルですが、ここまで原画の質が高いと、やはりよけいな小細工は無用だとわかりますね。

レイアウトのよさと相まって画面の抜けがよく、堂々とした映画の迫力に満ちあふれている。
本来であれば最新のジブリ作は、以降のアニメ映画の品質をはかるメルクマールとなるのですが、ここまで大変な仕事をやってしまうと参考にならないかもしれない。
外れ値みたいなもので、あれと比べたらたまらないよ、と同業者は思うかもしれません。
やはりふつうのアニメ映画は、撮影処理で勝負する方向が継続すると思います。

ストーリーに触れないように感想を書くのは大変なのですが、宮崎監督のセルフオマージュめいたシーンがけっこうありました。
おそらく熱心なファンだったら、「このシーンは昔も観た気がする」と思うところをいろいろ発見できるんじゃないでしょうか。
どこまで意図的なのかわからないですが、やはり今回は宮崎監督の集大成というおもむきがあります。

もののけ姫のコダマに続くような、人気の出そうなかわいいキャラも出てきたし、宮崎監督の若々しさに驚かされました。
そう、とにかく雰囲気が若くて元気なんですよ。(ストーリーが、という意味ではなく、映像の力が)
本田雄さんの力もあって、とにかく瑞々しいまでに若い。
全盛期を超えた凄みを示されたという気がして、「いま俺はヤバイものを観ている!」という感じが半端なかったです。
同時に、ここまで若々しいのが出てくるということは、本当にこれが最後の作品になってしまうかもしれない、という寂しさも感じてしまった。

月並な言い方になってしまいますが、「君たちはどう生きるか」は、とにかく映画館で観てもらいたい作品ですね。
しばらくしたらストーリーについてもこのブログで語ると思いますが、とにかくいま言えることは映画やアニメが好きな人は、なるべく早く映画館で観たほうがいいということです。