類似連鎖法(ステープリング・テクニクス)

【 類似連鎖法 】

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「ヌグはオタクではないのです!」
 顔を真っ赤にした子ネズミが寝室に消え、ドアがとじられた。
 パタン。
             ∽∵∧―∧
 と、高橋は参考書をとじた。※①
「だめだ……頭に入ってこない。」
 勉強しようにも、すっかりつかれきってしまっていた。きょうはいろいろありすぎた。
 ため息をつき終わる間もなく、緞帳がおりるようにゆっくりまぶたが閉まっていく。
 眠り目になって、シャーペンをぽんと放り投げる。
 自由の身となったペンが座卓に着地し、転がった。
 ころりと一八〇度――
             ∽∵∧―∧
 寝返りを打つ。※②
(……ん?)(ここ?)(なんだっけ)(そうだ、勉強の途中で)
 眠りからさめたが、まぶたの緞帳はまだあがっていない。音も自分の鼻息しかきこえない。もう朝かどうかもわからないが、体の内側の重たさから、かなりの時間寝てしまっていたことがわかる。夢を見たおぼえもない。つかれのあまり熟睡してしまったようだ。


※「アキハバラ∧デンパトウ」より引用
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映像におけるマッチカットのように、類似した動きによってシーン同士をつなげる方法。
「動作跨ぎ法」とのちがいは、動作の「意味」の類似によってつなげている点。

上記引用文の※①の個所では、ドアが閉じられる動きと、参考書を閉じる動きの類似を示すことによって、場面転換しても物語の調子を持続させている。

もし仮に、「パタン。 (空白行) と、高橋は参考書を閉じた。」の部分を丸々削ったとすると、空白行を挟んでシーンの断絶が発生してしまう。
しっかりと一区切りつけるのであればそれでもいいが、この場合は調子の連続性を保って軽快につぎへ移るほうが、演出上望ましい、と作者は考える。

また、上記引用文の※②の個所も、シャーペンの転がる動きと、主人公の寝返りの動きを似通わせている。
これによって、「主人公が寝る→目をさましてつぎの展開へ」という流れをスムースにしている。